「働き続けたい」と願う人の選択肢を、一緒に守りたい
「なぜ、ケアマネジャーを続けながら、企業の仕事と介護の両立支援もしているのですか?」
講演会や交流会などで、よく聞かれる質問です。
居宅介護支援事業所のケアマネジャーと、企業で働く人を支援するワークサポートケアマネジャー。
対象も仕事の内容も異なるように見えるかもしれません。
けれど、私の中では、この二つの仕事は一本の線でつながっています。
その原点にあるのは、私自身が長い間、「働き続けたい」と考えながら仕事と家庭を両立してきた経験です。
社会福祉士として、これからという時期に
私は大学卒業と同時に社会福祉士の資格を取得し、高齢者福祉の仕事に就きました。
障害福祉の分野で働いていた母も、私が同じ福祉の道へ進んだことを喜び、期待してくれていました。
仕事を始めて1年。
仕事が楽しくなり、これからさらに経験を積んでいきたいと思っていた時期に、長男を授かりました。
当時はまだ結婚しておらず、母にも職場にもなかなか話すことができませんでした。
「仕事はどうなるのだろう」
「職場に何と言えばいいのだろう」
「母を失望させてしまうのではないか」
答えの出ないことを何度も考え、話せるようになるまでに2か月近くかかりました。
当時の私が、社会福祉の知識によって「一人でも何とかなる」と前を向けた経験については、別の記事で書いています。
この出来事は、知識が人の選択肢を増やすことを実感した、私の原点の一つです。
しかし、私の両立の経験は、そこで終わったわけではありません。
3回の育児休業と、同期に抜かれた悔しさ
その後、私は3回の育児休業を取得しながら、仕事を続けてきました。
子どもを育てながら働くことができたのは、周囲の支えや制度があったからです。
一方で、両立できたことへの感謝だけでは語れない感情もありました。
育児休業を取得している間に、同期入職の男性職員が昇進し、立場の上では「抜かれた」と感じたことがあります。
もちろん、その職員が努力していたことも分かっています。
それでも、仕事が好きで、これからもっと頑張りたいと思っていた私にとって、悔しさがなかったわけではありません。
家庭を大切にしたい。
でも、仕事でも成長したい。
休むことで職場に迷惑をかけているのではないか。
以前と同じようには働けない自分を、どう受け止めればよいのか。
両立する人が感じる戸惑いや気後れ、置いていかれるような寂しさを、私自身も経験してきました。
「制度がある」だけでは解決しないことがあります
育児休業の制度があっても、利用する本人の迷いや申し訳なさが、すべてなくなるわけではありません。
これは、仕事と介護の両立にも共通していると感じます。
介護休業や介護休暇の制度を知っていても、
「会社に言ったら、今までと同じように働けなくなるのではないか」
「同僚に負担をかけてしまうのではないか」
「管理職としての評価に影響するのではないか」
と考え、相談をためらう人がいます。
制度を説明するだけでは、その人の不安が解消されないこともあります。
だからこそ私は、制度や介護サービスについて伝えるだけでなく、本人が何を大切にしているのか、これからどう働きたいのかを一緒に考えることを大切にしています。
特別養護老人ホームで考えた、自分自身の老後
私が働き続けたいと考えてきた背景には、もう一つの経験があります。
特別養護老人ホームで生活相談員をしていた頃、高齢者の生活や経済状況に触れる機会が多くありました。
その中で、特に印象に残ったのが、女性の年金の少なさでした。
当時は厚生年金の受給にも加入年数の条件がありました。
高齢になってからの暮らしを考えたとき、「私も厚生年金を受け取れるところまでは、できる限り働き続けたい」と思うようになりました。
仕事を続けることは、現在の生活を支えるだけではありません。
将来の生活を守り、自分自身の選択肢を残すことにもつながります。
だから私は、働き続けたいと思う人が、育児や介護を理由に、望まない形で仕事を諦めなくてもよい環境をつくりたいのです。
離職しないことだけが正解ではありません
仕事と介護の両立支援というと、「介護離職を防ぐこと」が目的だと思われることがあります。
もちろん、十分な情報や支援がないまま離職してしまう人を減らすことは重要です。
ただし、私は、どのような場合でも仕事を続けることだけが正解だとは考えていません。
大切なのは、本人が十分な情報を得て、相談し、いくつかの選択肢を検討した上で、自分の生き方を決められることです。
本当は働き続けたいのに、
「ほかに方法が分からないから」
「相談できる相手がいないから」
「仕事と介護は両立できないと思い込んでいるから」
という理由で離職を選ばざるを得ない状況は、減らしていきたいと思っています。
大変な時期を一緒に乗り越え、その人が望む働き方を続けられる状況をつくる。
それが、私が目指している支援です。
現役のケアマネジャーを続ける理由
仕事と介護の両立支援に取り組む一方で、私は現在も居宅介護支援事業所のケアマネジャーとして、利用者さんやご家族を支援しています。
企業支援だけに専念した方が、効率がよいのではないかと思われるかもしれません。
それでも現場を離れないのは、介護の現実は、制度の説明だけでは伝えられないからです。
介護サービスを利用すれば、すべてが解決するわけではありません。
希望するサービスがすぐに利用できないこともあります。
本人と家族の希望が異なることもあります。
介護の状態や家族関係、働き方によって、必要な支援は一人ひとり異なります。
日々の介護現場を知っているからこそ、企業や従業員に対しても、現実に即した情報を伝えられると考えています。
企業の制度と介護の現場。
その間をつなぐことが、現役のケアマネジャーでもあるワークサポートケアマネジャーとして、私にできることです。
働き続けたい人の気持ちを、置き去りにしないために
私自身も、家庭との両立に戸惑い、職場への気後れを感じ、同期に抜かれた悔しさを経験しました。
それでも仕事を続けてきたからこそ、仕事を大切に思う人の気持ちが分かります。
介護が始まったとき、働く人の生活やキャリアが、突然途切れてしまわないように。
会社と従業員の双方が、一人で抱え込まずに相談できるように。
そして、働き続けたいと願う人が、自分の選択肢を失わなくて済むように。
私はこれからも、ケアマネジャーとして介護の現場に立ちながら、仕事と介護の両立支援を続けていきます。
仕事と介護の両立について、ご相談ください
ペンタスケアマネジメント株式会社では、介護現場での経験を基盤として、企業や働く方に向けた仕事と介護の両立支援を行っています。
- 従業員向けセミナー
- 管理職向け研修
- 介護相談窓口
- 従業員の実態把握アンケート
- 企業担当者からのご相談
- 仕事と介護に関する個別相談
「会社として、何から始めればよいか分からない」
「従業員から介護の相談を受けたが、どう対応すればよいか分からない」
「介護が始まっても、仕事を続けられるのか不安」
そのような段階からでも、ご相談いただけます。
制度の説明だけで終わらず、一人ひとりの状況に合った選択肢を一緒に考えていきます。
本文中の「当時の私が、社会福祉の知識によって『一人でも何とかなる』と前を向けた経験」については、別の記事で書いています。投稿一覧
